ただの雑駁

理屈と均整を求めたがります。仕方ないですよね。人間だもの。

「すべてがFになる THE PERFECT INSIDER」について

久方ぶりにTVアニメ「すべてがFになる THE PERFECT INSIDER」を鑑賞しました。
放送当時に観ていたので、5年ぶりくらいでしょうか。

私は原作者の森博嗣がとても好きなのですが(小説は全て既読です)、彼についてのすべての始まりは「すべてがFになる」でした。小説もとても面白いですが、アニメ版もよく出来ています。面白いです。

作中に登場する「真賀田四季」という天才科学者がいるのですが、森博嗣のシリーズでは度々登場し、とても興味深いキャラクタなのですが、彼女の初出の作品も「すべてがFになる」となっています。彼女の残す言葉はひじょうに突き刺さる言葉が多く、学ぶべき点が多いです。そんな彼女の言葉のうち、アニメ版で最も突き刺さる言葉を記載します。


部分的に切り取った言葉として扱うことで汲み取れる解釈が変わってしまうため、会話の流れの全文を転記しました。

「お母様、海は月より人間に必要なものに思えます。」

「それは人間との関係が強いということ。」

「人間も他の多くのものと関係しているのですね。」

「そうです。一人一人の人間の存在がその周辺に影響を与えます。でも人は、周りの人や物の為に存在しているのではありません。つい、誰かのためになりたい、皆の役に立ちたい、それを自分の存在の理由にしたいと考えがちなのです。存在の理由を分からないままにしておけないのね。常に答えを欲しがる。それが人間という動物の習性なのです。」

「欲しがってはいけないのですか?」

「いいえ。欲しがることは間違いではありません。しかし、完全なる答えなどないのです。でもそれを問い続けることは、とても大事なことです。」

「近づくことは出来るのですね。」

「そう考えれば良いと思います。でも、私にもまだ分かりません。」

「お母様にも、分からないことがあるのですか?」

「勿論です。分からないことがあるから、人は優しくなれるのです。」

「どうしてですか?」

「全てが分かってしまったら、何も試すことが出来ません。何も試さなければ、新しいことは何も起こらない。人は分からないことの答えを知りたいと思って追い求める。そこに優しさや、懐かしさ、そして喜び、楽しみが生まれるのです。」

「私は、お母様にいつも聞いています。こうして答えを求めることで、私は優しくなれますか?」

「そうね。私が居ない時もいつも問いなさい。誰も答えてくれない時もいつも問いなさい。自分で自分に問うのです。それを忘れてはいけません。それが貴方の優しさになるでしょう。」


すべてがFになる THE PERFECT INSIDER/第11章 無色の週末)


犀川先生が述べる言葉で「意味がないのが高級」という台詞があります。意味がないことって素敵ですよね。私はこれを内発的動機づけの一種だと思っていますが、本質的に最も尊い行為は意味のない行為ではないでしょうか。
誰かに共有したい、誰かから何かを求めたい・求められたい、など意味があると途端に薄っぺらい感覚に陥ることがあります。勿論、本人がどう考えていようが、他者によって影響を受けてしまう部分はありますので、一概に全ての事柄に当て嵌ることのないことは承知しています。

また、同様に「分からないこと」も素敵ですよね。分からないことから全ては始まり、分かるまでのプロセスを経て様々なことを感じることが出来ます。何もかも分かってしまうことほど、孤独なことはないでしょう。分からないから、愛おしく感じることだってあると思います。

真賀田四季も上記の言葉で言及していますが、人間は何かに意味や理由等を当て嵌めたがるのでしょうね。ただ、それを他のあらゆるもので安易に求めてはいけないと改めて感じます。
「Uncharted Unknown」ですね。常に問い続け、良心に従う。そうやって生きていたいです。