ただの雑駁

理屈と均整を求めたがります。仕方ないですよね。人間だもの。

【感想】「風の谷のナウシカ」を劇場で観て。

先日、映画館で「風の谷のナウシカ」を観てきました。
「一生に一度は、映画館でジブリを」良いキャッチコピーだと思います。

もう金曜ロードショーも含めて何度も何度もナウシカを観てきています。子供の頃は眠くなって腐海に突入するくらいで観るのを終えていたり、寝ぼけながらエンディングまで辿り着いたりと視聴の環境や程度は異なるもののナウシカに触れ続けていたと思います。
今回、初めて映画館で観ることで、改めてナウシカに気付かされたことが多くありました。ただこれは観る媒体や回数に限らず、私自身の変化が及ぼす影響だと感じます。変化に依って受け取り方が変わり、かつ子供から大人まで楽しめるのはジブリと言うか宮崎駿の為せる作品ですね。

ポスター、良き。

ナウシカについて

改めてナウシカというキャラクターを観ると本当に恐ろしい存在です。人も、蟲も、自然も、全てに対して慈愛を持って接しています。自身を犠牲にしてまでも、自身が何を為すべきか何を為したいかを実直に向き合って行動しています。
彼女はその労りと友愛を持って万物に接することで、万物から愛される存在になります。敵も味方も、蟲でさえ彼女に対して心を開きます。映画では一貫した彼女の姿勢が村里を救う結末となっていますが、原作である漫画ではさらに壮絶な物語の中を生きています。
多くは語りませんが、腐海の成り立ちや、王蟲の意思、様々な人種と接することで彼女は自身と自身の世界について理解していきます。
ナウシカは決して自己投影の対象ではないと思います。ナウシカのすべてを共感できる人なんて稀人です、それくらい彼女は突出した人物像です。漫画では一部の部族から女神扱いされているのも頷けます。
彼女の労りや友愛の根底には物事を表面的に判断せず、本質的な部分を感じ取るところがあります。この本質的な部分を、あらゆるものへの労りと友愛といった表現を通して多くの人に肚落ちするようなキャラクターだと思います。つまりは、視聴者はナウシカの周りにいる村の民やクシャナなどの敵兵と同じ目線でナウシカに触れ、変化を得るのではないかと思います。千と千尋などとは全く逆のアプローチではないかと。

世界観について

ナウシカの世界は残酷です。腐海の瘴気のあるところではマスクなしでは数秒で死に至り、腐海のほとり村里では年老く者は少しずつ瘴気に冒され死に行きます。腐海では人を襲う蟲達が支配し、人類はあらゆるものに追いやられて生活しています。また、産業文明は滅び、自然と生きる村の民や火を捨てた民、産業文明の欠片を使って戦争を始める民など、環境や人といったあらゆる面で混沌としています。
このような世界観で私が最も感じるのは生きていること自体が美しいということです。当たり前のことですが、明暗がはっきりとしている方が明瞭です。残酷な世界であるから、そこに見出すものがより美しく感じることがあります。こんな世界であるにも関わらず、人としての尊厳や気高さを忘れずに、万物に対して労りと友愛を持って接しているナウシカの存在がどれだけ輝かしいものであるか、やはり上記のような存在です。そして、ナウシカを通じて、普遍的な世界への問いかけと、不変なものはないという問いかけを行うこの作品を生み出した宮さんの奥深さには流石としか言いようがありません。

長々と書きましたが、劇場で観るジブリは最高です。曇りなき眼で劇場に足を運ぶことをおすすめします。