ただの雑駁

理屈と均整を求めたがります。仕方ないですよね。人間だもの。

【感想】三体Ⅱ 黒暗森林

えげつない面白さです。
第一部である「三体」は「黒暗森林」の序章に過ぎませんが、それでも「星を継ぐもの」や「幼年期の終り」を彷彿とさせる面白さでした。これはSFにおいては最大級の褒め言葉なのですが、「暗黒森林」はさらにその上をゆく面白さです。
正直、何処かで流石に失速するのではないかと思いながら読み勧めていましたが、杞憂に終わりました。見事です。中国SF恐るべし。

面白いSFによくあるのは魅力的な用語かなと思います。1984とかわかりやすいですが、「二重思考」とか「二分間憎悪」とかそういうのです。そしてこの暗黒森林はそういう用語が沢山出てきますね。「面壁者」「破壁人」「智子」「精神印章」などなど。特に「面壁計画」については、本当に心躍らされました。

「面壁計画」の設定が面白過ぎて、これを題材にモノポリー的なゲームとか作れそうだな、って勝手に思っちゃいました。ほんと偉大なる戦略家に敬意を払います。
帯コメントに「劉さん自身が最高の面壁者です」とか書かれてて、まぁその通りかな、と笑

作者自身が仰っていましたが、この「三体」という作品を二項対立のSF小説(曰く二次元小説)と呼んでいました。そこに宗教や哲学が加わると三次元SFなんだとか。
こういう括りで言うと私は三次元SFの方が圧倒的に好きなのですが、二項対立のほうが王道感ありますよね。そして作品にも言えますが、やはりシンプルなものは強いんですよ。勿論、シンプルさには妥協の許されない美しさを伴う必要がありますが、「三体」はそういう意味でも理論物理学者でもない限り、そうそう違和感なく面白く読めるのではないでしょうか。

この「三体」シリーズ、万人にオススメできる小説です。これをキッカケにSF小説に目覚めるとかもアリだと思います。一部、二部を経ることで、最高のカタルシスを味わえる作品なので、読まないという選択肢が本当に勿体ないです。


三体Ⅱ 黒暗森林(上)

三体Ⅱ 黒暗森林(上)

三体Ⅱ 黒暗森林(下)

三体Ⅱ 黒暗森林(下)